リュウズの言象

そのとき、微骨のあたるような音が、こつん、とちいさく響いた。

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西向く士の月のさいごの日の晩には腕時計のリュウズを巻いて、日付けを一日すすめること。けれども、ときどき巻くことをわすれて、29日であったり31日のままであったり、そのままもう一日ほどやりすごしてしまうこともあって、そんなときはたいてい明くる日の昼をすぎたあたりにふと腕時計をみやったとき、あぁそうだったと、うっかり読みとばしていたうしろのページへあとずさりするかのように、すこしためらいがちに、けれども言葉そのものはためらうことなく、きえることによってあらわれていく日付けがひとつの言象として、景色のなかから引き寄せられていく。

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暦のうえでありえない、思いちがいの余剰のような日があるとして、リュウズの言象がそんな一日をやりすごすための、ちいさな骨音として発せられるひとつの言語となるように。








*最新号 scene 12 / 2017年4月31日発行
次号 scene 13 / 2017年6月31日発行予定
*「リュウズの言象」は自主発行のフリーペーパーです。名古屋及びその近郊のギャラリー等にて配布しています。

<配布場所>
AIN SOPH DISPATCH(名古屋)
GALLERY CAPTION(岐阜)

front(岐阜)
Arco(名古屋)

photo by tomoko yoshida